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2024.05.13
産学連携研究
緑の力を科学で証明、オフィス環境改善の秘訣
緑の持つ力は、人に対して様々な癒し効果やプラスの心理効果をもたらしてくれます。そのポテンシャルの多くは、昔から口伝されてきました。例えば「緑をみていると心がやすまる」などは、誰もが聞いたことがあると思います。
しかし、それは誰の言葉かわからないし、イメージ的なものでしかありません。証拠となるものが少ないのです。実際にグリーン・ポケットのスタッフが「緑は人の心を癒します」とその効果を説明しても、お客様によってはこう言われる方もいらっしぃます。
「緑の良さはわかるけど、効果は具体的に証明されているのですか」と。
確かに科学的な証明なくしては、良く知られている‘おとぎ話’にすぎないのかもしれません。
産学連携研究の始まり
イメージでしかないのなら、数字やデータで証明する必要がある。「小さな森づくり」を進めていく上でその思いは強くなります。つまり
職場の緑が、働く人のストレスを減らす、メンタルヘルスを改善する
このことを、科学的に証明する必要があります。それまで同じような研究報告はありました。しかしそれは大学の研究室で学生数人を対象にした結果であり、実際に稼動中でしかも複数のオフィスで行われた研究はほとんどありませんでした。
勿論私たちの専門は研究ではありません。然るべき研究機関のオーソライズが必要です。そこで監修をお願いしたのが、千葉大学園芸学部の岩崎寛(いわさき ゆたか)教授です。岩崎先生は「人と植物の関係」について研究されており、一般企業との研究実績も豊富な方です。私たちの「小さな森づくり」の構想も理解していただきました。
こうして2014年から3年間にわたる産学連携研究がスタートしたのです。
科学的に証明された緑の効果
実験は次の通りに行われました。実験データは次の通りです。
【実験方法】
オフィスの各人のデスクの上に植物をおいて、植物がある場合とない場合にどれだけメンタル面に影響があるのかを実証する。
【実施場所】
都内で稼動中のオフィス。
【実験植物】
ポットサイズのテーブルヤシ、ポトス、サンデリアーナ、コンパクター、パキ
など16種類。
【分析方法】
感情面を見る、主観評価VAS(Visual Analogue Scale)調査、心理面を見る、心理評価POMS(Profile of Mood States)調査、アンケートのデータを分析。
【調査の期間と被験者数】
第1の実験 2014年8月~10月、1社48人
第2の実験 2015年4月~7月、5社181人
第3の実験 2016年10月~11月、10社409人
*いずれも20代から60代の男女。延べ800人弱に行い、有効回答638人。
【本研究で明らかになったこと】
オフィスに植物を置くことで「仕事のやりがい」や「仕事への集中力」などのプラス要因が向上する効果があり、「緊張」「不安」「怒り」などのマイナスの要因が改善される効果がある。即ち、ストレス軽減効果があることがわかった。
尚、この研究成果は、自然再生をテーマにするアジアで最初にできた学術団体で、緑や自然の再生,保全などに関する理論と具体的な技術について研究している「日本緑化工学会」で発表されています。特に2015年度の「オフィス緑化が勤務者に与える心理的効果に関する研究」は、その年の優秀な論文に贈られる「優秀ポスター賞」を受賞しています。
(日本緑化工学会誌;第41巻第1号、第42巻第1号、第43巻第1号)
岩崎先生も「これまでの実験は大学施設内や学生を被験者としたものが多かったが、この実験は実際に稼動しているオフィスで行ったことに価値がある」と話されています。
その他、実験でわかった緑の効果は次の通りです。
・85%の人が「植物があった方が良い」と感じている。
・植物を置くと職場環境に満足する人が増えた。
・植物を置くことで「職場」での会話が増え、その結果「仕事への意欲・活気」が向上し、「疲労や心の混乱」が少なくなった。
・同じ植物を置き続けるよりも、植物を変えていった方がメンタル改善効果は高くなる傾向がある。
・企画や設計などクリエィティブな職種では、植物を置くと会話増え、活気がうまれる。
これが産学連携によるオフィスの緑が勤務者に与える影響の実験概要です。
とても有意義な研究となり、「小さな森づくり」を広げていく構想に確かな科学的確証を得ることができました。なんとなくいい、ではなく自信をもって良いといえるようになりました。岩崎先生とゼミの学生たち、そして被験者として協力いただいた企業の皆様には感謝の念が堪えません。
産学連携研究は3年に渡って行われたので、期間中は様々なことがありました。被験者となっていただいたオフィスで働く皆様からは、アンケートやヒアリングで様々なご意見を頂戴しています。
やはり、実験を通じて緑に対する愛着が生まれたという声をよく聞いたそうです。実験期間中は社員同士が自分のデスクに置いた緑の話で盛り上がることが多かったようです。「今日も元気だ」「背が伸びたみたい」など、まるで子供や孫自慢をしている様子がアンケートから伺えました。
また名前を付けたり、「おはよう」「いってきます」などと話しかける人もいました。緑は「同じ職場で一緒に働いている」仲間として愛されたのでしょう。
ストレスチェック制度の始まり
そして、私たちがこの科学的検証結果を背景に「小さな森づくり」を展開するにあたり、サプライズが用意されていました。政府によるストレスチェック制度の始まりです。
産学連携研究による実験スタートは2014年8月ですが、まるでそれを追いかけるかのように、ストレスチェック制度は翌年の12月から実施されました。労働安全衛生法の改正により従業員50人以上の企業に義務付けられた制度です。目的は従業員のストレスレベルを把握し、メンタルヘルス不調を早期に発見して対処することですが、制度の導入背景には、企業の生産性向上と従業員の健康維持の両立を図る意図があります。
企業は、ストレスチェックの結果を基に職場環境を改善し、従業員のメンタルヘルスをサポートするための対策を講じる必要に迫られます。社員同士のコミュニケーションを円滑にするための施策や、ストレスを軽減するための取り組みが求めらるようになります。例えば、リラクゼーションスペースの設置や、メンタルヘルスに関する研修の実施などが挙げられます。
その1つとして、グリーンレンタルがあるのです。植物が持つリラックス効果や心理的な安定感が、従業員のストレス軽減に寄与することが私たちの研究で科学的に証明されました。オフィス全体の雰囲気が改善され、従業員のメンタルヘルスが向上する。生産性の向上や創造性の発揮にも繋がり、業績アップも期待できます。この研究は時代の追い風を受けて行われ、進めていったという実感がありました。偶然ではなく必然、実にタイムリーで有意義な研究だったと自負しております。
〇今後の可能性
グリーン・ポケットは長年のレンタルサービスの実績から、お客様から多くのポジティブなフィードバックを受けています。従業員のメンタルヘルスが向上した、職場の雰囲気が良くなった、コミュニケーションが円滑になった、従業員同士の協力が強化されたという事例です。そんな植物の効果を最大限に引き出すため、適切なコーディネートを行っています。
私たちはこれからも緑のプロフェッショナルとしての専門的な知識と科学的根拠に基づいた「小さな森づくり」をすすめていきます。