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2024.05.27
産学連携研究
緑でメンタルヘルス改善!オフィスに植物を導入する効果
2014年5月、私たちは緑が働く人のメンタルに与える影響についての研究を千葉大学と産学連携でスタートしました。実際に稼働しているオフィスにおいて、各人のデスクの上に植物がある時とない時のメンタル状況の違いについて調べる研究です。 そして翌6月、政府もメンタルヘルスに関して、労働安全衛生法の一部を改訂する法案を国会で公布しています。それが2015年12月から実施された「ストレスチェック制度」です。
〇ストレスチェック制度の背景と目的
ストレスチェック制度は、政府が仕事や職業生活に強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者が5割を超えている状況を改善するために施行したものです。職場における仕事や人間関係による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者は増加傾向にあり、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが重要な課題となってきました。 こうした背景を踏まえ、「労働安全衛生法の一部を改正する法律」において、心理的な負担の程度を把握するための検査「ストレスチェック」、およびその結果に基づく面接指導の実施等を内容とした「ストレスチェック制度」が新たに創設されたのです。常時50人以上の労働者を使用する職場は義務化されました。50人以下の職場でも、当分の間は努力義務とはされていますが、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止のため、できるだけ実施することが望ましいとしています。 実際に精神面で問題を抱えていては、いい仕事はできません。いい仕事ができなければ、会社の業績は停滞してしまい、経営に直結します。身体の健康同様に心の健康が求められ、特にストレス管理への関心が高まります。企業はCSRの一環としても社員の健康管理が求められ、その為にも良きオフィスづくりに力を入れるようになりました。社員のストレスを減らすために、総務部門は様々な施策を求められるようになります。具体的には次のような対策です。 ・個人面談を増やす ・有給休暇の取得率を薦める ・ヒーリング施設を増やす などです。ストレスチェックフェアが開かれ、ヒーリング音楽を聴く、マッサージを受ける、仮眠するなどの施設が提案されます。この流れは現在は働きやすい職場づくりとなり、福利厚生として引き継がれています。 ストレス対策をテーマとした商品も多く発売されました。当時の資料を見ると、多くの企業が「健康」に「ストレス対策」をプラスしてアピールをしています。コメントは販売当時のものですが、当時は話題となり、売上も好調だったようです。 ・紳士服のはるやま商事、「ストレス対策スーツ」。東洋紡と開発したニット素材は“着ているのを忘れるくらいよく伸びてリラックスできる”ために、肘や背中の張りを解消する。 ・雑貨店ロフト、「ルルド めめホットチャージ」。目を温めるものですが、USBでパソコンに接続して充電できるため、デスクワークに疲れた時の休憩に使用。 ・ヤクルト、「レモリア」。メンタルリラックス飲料を謡い、リラックス効果があるとされる緑茶のうまみ成分「テアニン」を含む。 ・江崎グリコ、「GABA(ギャバ)」。ヂョコレートの原材料のカカオに含まれる天然由来のアミノ酸が、興奮した神経を抑え、ストレスを和らげる効果が期待できる。 食品業界には以前から「抗ストレス商品」「メンタルバランス・リラックス商品」などと呼ばれる、食べるだけ、飲むだけでストレスが減るという「ストレス緩和商品」があり、食品や飲料のストレスケア商品は現在も増えています。 しかしこうした商品の購入は個人の問題で、会社が関われることは限られます。ストレス対策は福利厚生として引き継がれ「働きやすい職場づくり」に様々な対策が必要となりました。長時間労働、ブラック企業などという問題も未解決のまま、これといった対策はなくストレスだけが増え続けています。
〇緑で働く人のメンタルを健康に
そこで、緑の持つ癒し効果が注目されることになります。私たちの研究は、正に時代に沿った、タイムリーなものとなりました。緑はストレスを軽減する効果があることから、オフィスに置くことで働く人のメンタルが安定する。仕事がはかどり、生産性もアップすることが見込めます。またコミュニケーションを闊達にする効果もあることから、社員同士の会話も弾み、孤立感を減らすことが期待されます。このことを、私たちは科学的に証明したのです。グリーン・ポケットは緑を置くだけでストレスチェック制度への対策ができるのです。お客様の仕事を増やすことはありません。 そして実際に国のストレスチェックテストが実施されると、思いがけない事実が判明しました。同テストの質問項目内容が、私たちの産学連携研究で使用した調査の質問内容とほぼ同じだったのです。予想はしていましたが、ここまでとは思いませんでした。 私たちの研究では、感情面をみるVAS調査と心理面をみるPOMS調査という2つの調査をメインに、アンケート調査を併せて分析を行いました。 VAS検査(Visual Analogue Scale)とは主観面をみる調査です。植物があることで「仕事への集中力」「仕事への意欲」「仕事のはかどり」「職場での会話」「職場環境への満足度」について、どう思ったのか、どう感じたのかを分析します。 POMS検査(Profile of Mood States)は心理面を見る調査です。植物があることで人間心理の「緊張‐不安」「抑うつ₋落ち込み」「怒り₋敵意」「疲労」「混乱」「活気」がどう影響するかを分析します。結果、調査の値は2つとも、植物の設置前に比べて植物を設置後の方が良い結果がでました。 この2つの調査と、ストレスチェックテストにおける「国が推奨する57の質問票」は、表現は違うにせよ質問内容が似ています。例えば ・POMS調査では自分の精神状態について「気がはりつめる」「怒る」「ぐったりする」「生き生きする」など30の質問に答える。 ・国が推奨する57の質問票では自分の精神状態について「気がはりつめている」「怒りを感じる」「へとへとだ」「生き生きする」など57の質問に答える。 つまり、植物を置くことでVAS調査とPOMS調査の結果が向上したということは、ストレスチェックテストの結果も向上することが期待できるということです。 実際にお客様からは、次のような声をいただいております。家電メーカーの総務部長からお聞きしました。 『社長から会社の雰囲気を明るくする施策を考えるように言われていました。そんなときにグリーン・ポケットさんの産学連携のストレス軽減の研究結果を聞いて「これだ!」と思いました。 緑を全社に置いて1年後、全社としてのストレスチェックテストの結果が改善されました。緑が直接の原因かどうかは正直なところわかりませんが、効果はあったようです』 こうしたお客様の声を大切にして、良いオフィス環境を提供するための取り組みを続けて いきます。
〇ストレスフリーな社会を実現するために
私たちの産学連携研究はストレスチェック制度と同時期に始まりました。そして検査の質問内容も、非常に似通ったものでした。 これを最初は偶然だと思いましたが、最近は必然だったと思うようになっています。オフィスに緑を求める声は大きくなっています。国が、そして時代が私たちグリーン・ポケットの「小さな森づくり」を後押ししてくれていると思うようになったからです。そんな実感をもって、仕事に臨んでいます。 グリーン・ポケットは、今後も企業のメンタルヘルス支援に力を入れていきます。新たな研究やサービスの改善を通じて、より多くの企業に対して効果的なメンタルヘルス対策を提供し、健康で働きやすい職場環境の実現に貢献していきます。