観葉植物のCO2吸収能力とその環境貢献を科学的に検証 - 緑のレンタル | グリーンポケット          

小さな森づくりコラム

  • 2024.06.17

    室内のCO2を吸収

    観葉植物のCO2吸収能力とその環境貢献を科学的に検証

    植物は大気中のCO2を吸収し、新鮮なO2を創りだす。このことは小学校の理科の時間に教わります。

    それでは普段目にする人の背丈ほどのサイズの観葉植物、私たちグリーン・ポケットではLサイズと呼んでいますが、そのサイズの植物は実際にどれくらいの量のCO2を吸収するのでしょうか?

    これは当社設立以来のテーマです。室外の緑、例えば杉の木1本のCO2吸収量は年間13kgと林野庁が発表しています。しかし、室内の観葉植物の吸収量の公式データはありません。吸収量を測定する実験自体がほとんど行われていないのです。

     

    植物が空気中の汚染物質を清浄する効果については、よく知られた科学的データがあります。1980年代にNASA(アメリカ航空宇宙局)が科学的に証明したもので、宇宙と植物という意外な組み合わせです。

    宇宙船内での生命維持システムの開発中、密閉された宇宙船内の空気からは300種類以上の揮発性有機化学物質が検出されました。その除去方法で有効とされたのが、植物による浄化作用だったのです。NASAは、1984年に「植物には密閉された実験空間のホルムアルデヒドやトルエンなどを除去する効果がある」という研究結果を公に発表します。その仕組みは植物の葉にあるたくさんの気孔から空気中の汚染物質を吸収して、蒸散によりきれいな水蒸気を葉や茎から空気中に発散するというものです。データでは、六畳間に直径20cm程のポットに植えられた植物があると、ほとんどの有毒物質は人体に影響を及ぼさないレベルまで除去されるというものです。

    しかしこれは1980年代のデータであり、人間の日常空間におけるものではありません。現在問題となっているCO2に関する新しいデータが必要だと思いました。

     

    わが国では「換気など衛生的環境の確保に関する法律(通称:ビル衛生管理法)」という法律を定め、デパートなどの規模の大きな商業施設や、映画館、劇場といった娯楽施設、博物館・美術館、ホテルや学校、オフィスビル・事務所などを不特定多数の人が利用する「特定建築物」と定義し、床面積3000㎡以上の建物には、室内のCO2濃度は1000ppm以下(厚生労働省・建築物環境衛生管理基準)、教育施設は1500 ppm以下(文部科学省・学校環境衛生基準)に保つよう定めています。

     

    CO2濃度を下げるには定期的な換気が必要ですが、高層化による安全性の確保のためなど様々な理由で、窓を開けられないオフィスが多くなっています。

    そこで、我々の扱う植物の出番です。

    植物は光合成を行う過程で、CO2を吸収し酸素をつくり出します。地球上でCO2を減らすことができるのは、植物だけなのです。

    されています。近年は福祉の分野とも繋がり、新たな広がりを見せています。

     

     

    〇地球温暖化の原因とされるCO2

    東京都は2025年度から、オフィスビルなどに義務付けるCO2の排出削減義務率を大幅に引き上げます。制度改正案では、2025年度から始まる新築住宅への太陽光パネル設置義務と併せて、産業と家庭の両部門で脱炭素化を加速させるとしています。5年ごとに削減期間を設けていて、2529年度はオフィスビルなどは50%、工場などは48%の削減を義務付けました。これはそれぞれ現行期間(2024年度)と比べて2倍近くの引き上げで、今回は過去最大の削減率となりました。

     

    このように、社会全体に脱炭素の取り組みが進んでいます。人類の大きな脅威となっている地球温暖化、その元凶はCO2に代表される温室効果ガスの増加とされています。世界各地で異常気象が起こり、問題になっています。

    産業革命が起こるまで、地球上のCO2は海に溶け込んだり植物プランクトンの光合成などの自然現象によって吸収され、バランスが保たれてきました。しかし、人間が石油や石炭などの化石燃料を大量に燃やしたことで地球のCO2は急激に増加し、自然の仕組みだけでは吸収しきれず大気中に残ってしまったのです。それが気温上昇に繋がったとされています。

     

    〇国際社会の動き

     1995年、地球温暖化防止について第1回目の国際会議がドイツのベルリンで開催されました。国連気候変動枠組み条約締約国会議、COPの始まりです。以後毎年行われ、COP3では各国のCO2削減目標を明確にした京都議定書が採択されました。

    また、CO2の排出量取引を認める京都メカニズムが導入され、カーボンオフセットが注目されました。カーボンオフセットとは、企業が経済活動を行う上で発生させてしまうCO2について、その量に見合ったCO2削減活動に投資など行うことで「埋め合わせ」する仕組みです。例えば発展途上国のCO2削減に寄与すれば、仕組み上はその企業の出したCO2もその分オフセット、即ち相殺するという理論です。大企業はその取組をCSR活動の一環としていました。

     

    〇グリーン・ポケット独自の研究

    カーボンオフセットで相殺するだけでは地球にとってはプラスマイナスゼロであり、本来の目的はCO2を減らすことです。減らす力があるのは植物だけ、中でも1日の大半を過ごす室内の植物が果たす役割は大きいのです。

     

    しかし国連が認めるCO2削減は森林による吸収に限られています。室内植物のCO2吸収について排出権取引はありません。森林のように国際的に証明されたデータがないからです。しかし同じ植物であり、量は少ないですが吸収していることは間違いありません。

    そこで吸収量を知ることに意義を感じ、自分たちで研究し、測定を始めたのです。

     

    測定は、京都芸術造形大学(現在は京都芸術大学に改称)の銅金裕司教授の協力を得て行いました。銅金教授は芸術分野の方ですが、海洋学や植物生理学も修めており、植物のCO2吸収能力に注目した研究も発表されていました。

    連絡をとり何度か意見交換をして、植物の持つポテンシャルの高さと可能性について、互いの知見を確認することができました。

    そして「鉢植えの観葉植物のCO2吸収量を測定する実験」を行うことで合意に至ったのです。

     

    実験は当社の大会議室、測定装置は銅金教授が考案したバルーンを使用して行いました。実験期間は1年間にわたりました。

     

    【測定方法】

    観葉植物をバルーンに入れ、空気を一定方向に流し、入口と出口の空気に含まれるCO2濃度を計測。入口と出口の濃度の差を、植物のCO2吸収量として算出する。

     

    【測定した観葉植物】

    ベンジャミン・アレカヤシ・シナモン・マングーカズラ・パキラ・ポトスなど、通常のレンタルサービスで使用している20種類。

     

    計測にあたり一定の条件を設定。

    【天気】晴れ。【温度】15~25度。【照度】3000~10000ルックス。【場所】窓際から1・5~2・0メートル(直射日光が当たらない位置)

     

    過去には植物の葉1枚1枚のCO2吸収量を測定する実験はありましたが、植物全体の効果を検証することはなされていませんでした。

     

    つまりこれは、実際の鉢植え植物のCO2吸収量を測定した、日本で初めての実験といえます。

     

    Lサイズ10鉢で杉の木1本のCO2吸収量

    結果として、鉢植えのLサイズ(高さ150㎝から180㎝)の観葉植物は、年間平均1,5㎏のCO2を吸収することがわかりました。

     

    これは雨の日も入れた観測結果です。もし1年中晴れたとしたら、炭酸同化作用は当然晴れの日のほうが盛んに行われ、最大で1本平均年間約2㎏のCO2を吸収する計算になります。

     

    この量を森林の樹木と比較してみると、杉の木1本の吸収量は年間約13kgですので、目安としてLサイズ10鉢を置くと、杉の木1本と同じ吸収効果が見込めることがわかりました。森林によるCO2削減はパリ協定でも推奨されており、

    この実験結果は2050年のカーボンニュートラルにむけて今また注目されていよるようで、問い合わせを受けるようになりました。

     

    こうしてCO2は環境の問題から大きく注目されましたが、今は健康の問題までひろがりを見せています。グリーン・ポケット事業の社会的意義は益々高くなっていきそうです。

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