心と体を癒す園芸療法の歴史と現代の活用方法 - 緑のレンタル | グリーンポケット          

小さな森づくりコラム

  • 2024.08.15

    園芸療法

    心と体を癒す園芸療法の歴史と現代の活用方法

    緑を見ながら土に触るといった園芸行為は、人の心を癒すとされます。こうした癒しによる治療は園芸療法と呼ばれ、古くから世界各地で様々な形で行われており、効果が報告されています。近年は福祉の分野とも繋がり、新たな広がりを見せています。

    〇海外の園芸療法の歴史

    園芸が人の心身の健康に有効であることは、古代エジプト時代の文献にも残っています。欧州では、ドイツのクラインガルテンが知られています。工場労働者の健康回復のために作られた農園で、1814年にはクラインガルテン協会が発足、ドイツ各地に広まっていきました。当時のドイツの工場労働者たちの労働環境は非常に悪く、健康を害する人が多かったのです。その人達の健康を回復するための自然を提供することが目的の一つでした。そして、当時の労働者は子供がたくさんいましたが、経済的に豊かだったわけではありません。そういった子供たちが週末など、手軽に自然に触れられる農園にすることも、クラインガルテンの役割でした。   園芸療法という考え方を初めて確立したのはアメリカ合衆国です。1880年代から土に触れる作業が精神障害患者の回復に役立つというデータがあり、実施されていました。大きく知られるような変化が訪れたのが1950年代です。第2次世界大戦やベトナム戦争で、人を殺し友を失い、自らの心と体が傷ついた退役軍人たちの精神的・身体的リハビリテーションに、園芸療法は大きな効果を発揮しました。このことから全米各地で研究が高まり、1983年には園芸治療協会が設立され、医療分野における園芸療法の確立と園芸療法士の社会的専門職としての認知に繋がっています。 一方、やはり1950年代に北欧諸国でノーマライゼーションが始まります。これは、障害を持つ人々が社会の中で平等に扱われる権利を指す言葉です。障害者差別の撤廃や社会参加の促進を目指しています。社会全体の多様性を尊重し、誰もが自分らしく生きることができる環境を整えることにあります。この考えはアメリカの園芸療法にも取り入れられ、ガーデニングが国民的娯楽であるイギリスにも普及します。こうして医療・教育・福祉の総合化がイメージされ、福祉の社会的基盤整備が進んだ結果、欧米での園芸療法・園芸福祉は大きく広まりました。

    〇日本での広まり

    日本における園芸療法の歴史も古く、1930年代には一部の病院にて精神疾患患者の作業療法として園芸が採用されていた記録が残っています。積極的に取り入れ始められたのは1965年の作業療法士制度の導入からです。そして90年代、園芸療法は社会的に大きな認知を受けるようになります。はじめにアメリカからその言葉を持ち込んだのは澤田みどり氏です。1991年、財団法人日本緑化センターは各国における園芸療法の現状報告を発表、1993年にはアメリカのダイアン・レルフ博士らを招き日本で初めてとなる園芸療法の講演会がおこなわれました。翌年には京都で国際園芸学会議が開催され、英米の専門家が日本各地で講演を行い“園芸療法”という言葉はしだいにひろまっていきます。早くも、1995年には「イミダス」や「現代用語の基礎知識」などの用語辞典に“園芸療法”は登場しています。 財団法人日本緑化センターの調査によれば、園芸療法に取り組む施設は身体障がい者を収容する施設では50%、精神疾患患者を収容する施設では70%以上という回答。特に精神疾患患者を収容する施設では、その効果に対する評価も高く、急速な普及といえます。これがさらに「園芸福祉」へと発展したのは日本園芸福祉普及協会が設立された2001年からで、次のように多くの施設で利用されています。 園芸療法が取り入れられている施設   特別養護老人ホーム 有料老人ホーム(介護型) 介護老人保健施設 デイケアセンター 知的障がい者施設 病院の小児科(ぜんそくなど) 病院の屋上庭園 アルコール依存症者更生施設 震災復興住宅 養護学校    

    〇様々な分野との結びつき

    園芸療法・園芸福祉を専門学科としてカリキュラムを組む大学もあります。恵泉女子大学では2015年から社会園芸学科が新設されています。新設される社会園芸学科は、園芸学と心理学の視点から、豊かな人間関係を育む社会を実現することを目的としています。同大学は前述した澤田みどり氏の母校であり、園芸が「なんとなく良い」ではなく、そこに人を理解する科学である心理学を取り入れ、社会に目をむけ拡げていくとしています。また近年出てきた言葉に園芸福祉があります。園芸療法が広まる周りで、高齢者や障がいを抱える方が園芸をすることで元気になることから生まれたもので、介護問題などとも繋がってきました。今のところはまだ明確な区別は必要ないと思われます。福祉というのは行政をも巻き込んだ大きなカテゴリーです。園芸を治療の手段や目的としてもちいるものを園芸療法、そこまで求めないものは園芸福祉という程度の捉え方で良いと思います。現在当社でも障がい者の雇用を行っています。企業は従業員数に応じて障がい者雇用率が定められており、事業主は雇用率を守らなければなりません。我社でも温室管理業務で採用していますが、その仕事振りを見ていると一生懸命で実に丁寧です。なかでも指示されたルーティン業務を最後までやり抜く集中力は目を見張るものがあります。自分が世話しているという責任感がモチベーションとなっているのでしょう。グリーン・ポケットの仕事と障がい者は相性がいいようです。多様性を企業経営に取り入れようとするダイバーシティ経営が広がりを見せる中、障がい者雇用はますます増えていくことでしょう。福祉にも、緑は大きく関係していくことでしょう。   同じ生き物療法として、ペット療法もあります。医療的なカテゴリーとして動物療法と植物療法があり、そこから動物療法→ペット療法、植物療法→園芸療法と分かれています。 ペット療法の特徴は、即効性があり、深く癒されることです。犬を例とすれば、名前を呼べば反応する、嬉しいときは尻尾をふるなどの振る舞いに癒されます。そして情が移り、家族の一員という存在にまでなるのです。その一方で、ペットは食事の世話や散歩をさせるなど毎日面倒を見なければなりません。また寿命は短く、失った時の悲しみは大きい。何もやる気が起こらないといった“ペットロス”の状態になってしまうのです。深く癒してくれる反面、失った時の傷やストレスも深いのです。その点、園芸療法はペット療法にはない特徴があります。例えば   ・植物が水や剪定を求めてくることはない。自分の気が向いたときにすれば良い。・植物はすぐに反応しないが、新芽や開花など緩やかな反応をする。 ・植物を枯らしても深刻な悲しみや喪失感に陥ることは少ない。   つまり園芸療法は、自分で「園芸と関わる距離感」をコントロールできるという利点があるのです。   そして今、園芸療法はストレス社会の中で、メンタルヘルスやモチベーションをいかに良好に保つかに使われています。花や緑をただ飾ればいいだけではなく、何よりも環境への負担が少ないサスティナブルな取り組みが求められます。花や緑がそこにあると綺麗だという「絵」としての役割だった時代は終わりました。園芸療法の対象者は増え続けています。即ち、グリーン・ポケットのサービスを必要とする人が増えているということです。   グリーン・ポケットは、「小さな森づくり」を通してお客様に植物の素晴らしさを伝えています。医療分野・福祉分野へと広がる“植物の持つ力”も大いにアピールしていきたいと思います。   

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