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2024.12.22
2024年総括、植物と社会をつなぐ力とは
2024年も残りわずか、店舗のお客様以外は今週で仕事納めという会社が多いようです。私たちグリーン・ポケットも約1ケ月の間クリスマスムードを盛り上げてくれたもみの木やポインセチアを引き下げて、門松を飾り新しい神様をお迎えする準備にあたります。皆様には変わらないご愛顧をいただき、誠にありがとうございました。環境と健康の時代の中で、今年も様々な問題で植物と社会がつながっていることを感じた1年でした。関連性があるもの、話題となったものを、本コラムで紹介したものを含め振り返ってみます。
7月、厚生労働省は最新の医療機関を受療した患者数を科目別に発表しています。その中で精神科の受療者の増加が目立ち、2020年の精神科受療者は過去最多の約586万人となりました。前回調査の2017年から約196万人も増えているという結果です。新型コロナウイルスという未曾有の出来事も関係したのか、メンタルヘルスを蝕む人は確実に増えているようです。
改善策として、厚生労働省は10月に「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を開き、ストレスチェック制度の義務をこれまで従業員50人以上の事業所から50人未満の小規模事業所にも適用する方針を発表しました。全ての会社で職場改善のためにメンタルヘルス対策が徹底され、労働者の健康管理がさらに強化されることになります。具体例としては、労働時間の見直しや業務の負担分散、コミュニケーション改善などが挙げられます。これにより、従業員が働きやすい環境が整い、メンタルヘルスの向上だけでなく、組織の生産性も高まることが期待されています。
ストレスチェック制度がスタートして、今月は丁度10年目となります。働く人のメンタルヘルスの安定、職場環境の整備は増々企業にとって求められていきます。それには植物の持つ力が必要です。特にコミュニケーションを闊達にする効果は大きいとされ、実例としてアメリカのアマゾンがコミュニケーションはモバイルではなく対面が大切だと、来年1月から在宅勤務をオフィス勤務に戻すことを発表しています。今年も、そして来年もストレスフリーでコミュニケーション豊かな職場には、緑は必要なのです。
気候変動に関しても様々なニュースがありました。2024年も異常気象が日本列島を襲い、観測史上初・記録的という言葉を何度も耳にしました。正月早々に地震があった能登地方は、9月には豪雨に見舞われています。被災地の1日も早い復興を祈るばかりです。そして夏は異常な暑さとなり、今年の9月から11月までの全国の平均気温は平年と比べて1.97度高く、統計を取り始めた1898年以降最も高かった去年の平年差を0.58度上回り、記録を更新しました。12月半ばをすぎてから寒くなってきましたが、今年は秋を感じることなく冬を迎えた気がします。
国際的にも、気候変動は大きな問題となっています。熱波、豪雨、台風などで甚大な被害が世界各地で出ています。そんな中、4月に欧州人権裁判所が出した裁判の結果が「歴史的な一歩」として注目されました。
この裁判は、スイスの市民団体Senior Women for Climate Protectio(気候保護のためのシニア女性)がスイス政府を相手に勝訴したものです。同団体が「熱波のため健康被害が生じているのは国の気候変動対策の怠慢が原因」と訴え、欧州人権裁判所は「スイス政府の努力は不十分であり、市民の人権を侵害している」と彼女たちの主張を認めました。今後、同じような環境訴訟が起こる可能性は大きいと思われ、国が敗訴したという前例の影響は大きいと見られます。
日本でもここ数年異常気象が頻繁に発生し、特に大雨による被害は甚大です。カーボンニュートラルの取組の遅れが指摘される中で「今回の○○地方集中豪雨は、国の地球温暖化対策の遅れが原因」という裁判が起きるかもしれません。
こうした異常気象を引き起こしている原因は何か。気象庁は前述の能登豪雨の際に「今回の豪雨は地球温暖化が原因」としています。国際的にも地球温暖化はCop(国連気候変動枠組み条約締約国会議)にて議論され、CO2を減らしてカーボンニュートラルを目指す方向です。
ここで植物が大きく関係しています。産業革命前までは大気中のCO2は、海に溶け込んだり植物や植物プランクトンの光合成の自然現象によって吸収されてきました。いわば植物を始めとする自然が、地球の健康を守ってきたのです。
しかし、人間が石油や石炭などの化石燃料を大量に燃やしたことでCO2は急激に増加しました。そのために、前記のような処理では吸収しきれず大気中に残るようになってしまい、気温の上昇を招いているのです。これが地球温暖化の原因とされています。
ではどうすれば減らすことができるのか、その画期的な方法はまだ見つかっていません。現時点では植物による吸収に頼るしかないのです。植物の唯一無二の力が再認識されていくのです。パリ協定でも森林による削減が推奨されています。
また、室内のCO2の濃度が高くなると、人は眠気や頭痛に襲われて集中できなくなり、2000ppmを超すと体調不良を起こします。環境と健康の問題から、現代社会に植物は必要なのです。
しかし11月、アメリカ大統領選挙で共和党のトランプ氏が次期大統領となり情勢は変わるかもしれません。バイデン政権は、電気自動車の普及や再生可能エネルギーの推進などに巨額の補助金を投じてきました。経済低迷が政権交代の理由の1つであり、トランプ氏の再登場はこれまでと違うエネルギー施策が予想され、パリ協定の離脱も含め注目されています。
3月に第96回アカデミー賞の授賞式がハリウッドで行われました。日本代表作品として、役所広司主演の「パーフェクトディス」が国際長編映画賞にノミネートされています。カンヌ国際映画祭でも最優秀賞男優賞と高い評価を受けました。
役所広司が演じる主人公は淡々とルーティンな生活を送ります。同じ時間に起きて同じ仕事をして同じ銭湯に入り同じ酒を飲み、寝る。それが彼にとっては完璧で充実した毎日。象徴として、植物は登場します。毎朝霧吹きで観葉植物に水をかけること、公園の“緑の木漏れ日”を見上げることは、主人公の生きる意味や喜びを表現しているのです。勿論、植物にはセリフや役はありませんが、舞台は東京で出演者は全員日本人、監督はドイツ人というこの映画の中で存在感を見せています。なかなかの名助演振りです。
11月に茂木フォームの終わり雅世さんという方が「東京のおいしいボタニカルさんぽ」という本を出しています。観葉植物や花を買いながら食事もできる店が紹介されていて、こうした店は東京近郊で100店を超えているようです。都心の大きな店舗から夫婦で経営しているまで規模は多彩で、植物も希少ア性がありなかなか手に入らない品種や海外のガーデングッズを揃えているところもあります。食べ物もヘルシーな食材や調理方にこだわるなど、特徴を出しているようです。ちなみにボタニカルとは植物由来という意味で、コスメ業界などでよく使われます。
茂木さんは本の中で「旅行に出かけたかのように心と身体がリフレッシュする。そんな“都会のオアシス”を見つけるたびに、気持ちが少し楽になり、植物の放つパワーに何度も心を動かされました」と書いています。
お気に入りの植物を買った後は緑に囲まれて食事を楽しむ。そんな客層を対象とする“グリーンカフェ”ともいえるスタイルの店が、広まってきているようです。
2024年、植物はこのように環境、健康、文化といった社会の流れとつながってきました。2025年も更に関係を深め「小さな森づくり」の提案を推し進めてまいります。来年もよろしくお願い申しあげます。
Merry Christmas and Happy New Year! I wish you all the best.