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2025.02.10
バレンタインデーに想う、甘くない環境と健康の現実
週末はバレンタインデーです。円安や物価高など“甘くない”状況が続く中、今年のスイーツ商戦はどうでしょうか。
各百貨店の報告によると、2024年はカカオや砂糖といった原材料費の高騰などでバレンタイン向け商品は約10%値上がりしました。今年も引き続きコストは上昇していて、特に人気のある海外ブランド品は値上げになりそうだということです。
松屋百貨店は、昨年12月にインターネットで「誰のためにバレンタインチョコを買うか(複数回答)」というアンケート調査を約500人に行いました。結果は「恋人・配偶者・パートナー」、いわゆる本命チョコが67・1%で1位、「自分」へのご褒美チョコは62・2%と2位でした。義理チョコに代表される「会社関係」は26%まで減少したそうです。数年前は女子営業マンばかりか男子営業マンまでもが配り歩いている風景もありましたが、負担に感じる社員もでてきているようで、習慣としては薄れてきているようです。
2位となったのは、このところ定番で単価もアップしてきた自分への「ご褒美チョコ」。お一人様需要の伸びも背景にあり、来年あたりは1位になりそうな勢いです。各社はそれを見込んでか、新ブランドを増やしたり、その場で食べられるイートインや実演販売のコーナーを強化するなど工夫をこらして、需要を引き起こそうとしているようです。
○チョコレートと観葉植物の共通点
2月14日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを贈る日。この習慣は日本が発祥といわれています。始まりには諸説あって、昭和30年代にある洋菓子店がセールに合わせて広告を出したという説もあれば、戦前からずっとおこなっているという老舗もあります。いずれにせよ、時代と共に送る意味合いも相手も変わっていきました。
昭和40年代には、女性が男性に対して親愛の情を込めてチョコレートを贈るという「日本型バレンタインデー」の様式が中高生の間で広まり、市場が大きく伸びていきました。年に1度、女性から愛の告白が出来る特別な日。3月にはお返しを期待するホワイトデーが誕生し、男性にも広がっていきます。奥ゆかしい、昭和レトロな恋愛事情が見てとれます。
それから親しい友人と交換しあう友チョコが生まれます。職場などでは義理チョコが発生、配給性に近いものになります。ホワイトデーのお返しの方がコストがかかるケースもでてきました。よくいえば、コミュニケーションツールの1つとして進化したのです。今は頑張った自分のためにと、高級品が売れる時代になりました。
愛の告白から義理、友情の証、ご褒美へと、時代とともにバレンタインにチョコレートを“贈る意味”は変わっていきました。これはチョコレートがただ美味しい食べ物というだけではなく、生活を豊かにする存在として欠かせないものだからでしょう。業界も販促や商品開発に努力を重ね、この時期の売上は年間売上の約2割を占めるまでになっているそうです。
同じように、観葉植物も時代とともに“置く意味”は変わってきました。かつて観葉植物は、インテリアとしてオフィスを飾ること、受付や応接室でお客様を歓迎することを目的として置かれていました。それが今、緑の持つ力が科学的に証明されたこともあり、社会の流れとも結びついて「働く社員のための緑」へと変化してきたのです。
具体的にはCSRという考え方が社会に広まってきたことも影響しています。CSRとはCorporate Social Responsibilityの頭文字をとったもので、直訳すれば「企業の社会的責任」。企業が事業活動を通じて自主的に社会に貢献する責任のことです。CSRは経営戦略とリンクするようになります。
中でも職場環境に関しては、企業が求められるものが多くなりました。働きやすい職場を作ること=会社の責任ということです。サラリーや仕事内容だけではなく会社に対する求心力が高まること、つまり「この会社で頑張ろう」と前向きの姿勢が生まれることで、仕事の質や業績が改善するのです。
そのために現在企業は、福利厚生を充実する、ストレスフリーなオフィスにする、健康経営を実践する、社員のエンゲージメントを高めて定着率やリクルート効果を上げることに取り組んでいます。行政からも働き方改革が推奨されるようになりました。
こうした問題を解決するのに、緑の導入は効果があるのです。緑溢れるオフィスは、メンタルヘルスを良好な状態に保ち、コミュニケーションを闊達にし、集中力を高めます。その効果は産学連携研究で科学的に立証されています。業績のアップが期待できるのです。
バレンタインデーにチョコレートを贈る意味が時代とともに変わってきたように、オフィスにおける緑のポジションは大きく進化していきました。ただの経費から、なくてはならない存在に変わってきたのです。
〇カカオ豆価格高騰とその影響
バレンタイン市場は1400億円といわれ、国民的なイベントとして定着しました。その主役であるチョコレートは今、生産段階で大きな問題を抱えています。原料となるカカオ豆の価格が急激に高騰していることです。大手メーカーは主力商品を10~15%値上げしたり、製品の量を減らして価格を維持する「ステルス値上げ」や低価格帯商品の販売を停止するなど、販売戦略にも影響を与えています。実際に100円以下で買える商品は店頭で見なくなりました。2050年にはチョコレートが食べられなくなるというショッキングな予想もあり、消費者である私たちも危機感を持って受け止める必要がありそうです。
カカオ豆の価格高騰の主な原因は、次にあげる3つといわれます。①気候変動 ②森林破壊 ③需要の増加 です。
- 気候変動
カカオの主要生産地である西アフリカ、気温上昇という異常気象に見舞われています。この為、収穫量が大幅に減少しています。特にガーナやコートジボワールでは、干ばつや降雨不足が長期的に及び、生産に影響を与えています。
- 森林破壊
西アフリカの生産地で新たな農地確保のための森林伐採が進んだ結果、土壌の劣化や生態系の崩壊が起こり、生産効率が下がっています。
これらは持続可能な社会の実現に逆行する要因で、SDGsの実践やパリ協定の推進といった国際的な後押しが期待されます。
一方、③需要の増加は、世界的な健康志向の高まりが背景にあります。健康志向商品としてチョコレートの消費が増加し、カカオの需要がさらに高まり、生産が追いついていないのが現状です。また現地生産者の劣悪な労働環境の解決に向けた動きが進んでおり、彼らの賃金など生産コストが上昇している面もあるようです。
これは明るい方向が見えてきています。具体的には健康志向商品から環境配慮型商品なども増やしていくことです。実際にSDGsを意識したフェアトレードチョコレートや、サステナブルな包装を採用した商品が増加し、消費者からも支持を得ています。消費者の間では、環境や社会への配慮を重視した購買行動が広がりつつあります。そのため、製品のストーリー性の有無が購買決定に重要な要素となるのではないでしょうか。価格高騰は短期的には困難を伴いますが、長期的な視野で持続可能な事業モデルを構築することで、企業の成長と社会への貢献を両立させるチャンスでもあるのです。
気候変動と森林伐採は、本コラムでもカーボンニュートラルの項で何度かとりあげてきました。気候変動は地球温暖化の影響であり、その原因とされるのはCO2の増加です。産業革命以降人間は化石燃料を燃やし、森林伐採を続けた結果、植物が吸収しきれないCO2が残ってしまったのです。CO2減らすことができるのは植物だけがもつ力であり、パリ協定では森林による吸収の強化がおりこまれました。また、植物があることで心身が健康にまることが、産学連携研究で明らかになっています。
このように、カカオ豆高騰の背景にも「環境と健康」の問題があります。グリーン・ポケットが掲げる「環境と健康の提案」は現代社会共通のテーマといえるのかもしれません。