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2025.11.07
コラム
日本のオフィスとブラジルの国際会議をつなげる緑の力
〇パリ協定が実施フェーズへ
第30回 国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)は、 11月10日からブラジル・ベレンで開催されます。テーマ別日程(Thematic Days)が設定され議論が行われていきますが、その中で10年を迎えるパリ協定が実施フェーズに入ります。パリ協定は地球の温暖化を防ぐために平均気温の上昇を産業革命以前の1.5℃に抑えることを共通目標とし、国連事務局は今回の会議で現状報告を各国に促しています。 しかし、8月時点で提出済みの国は全体の約2割に止まっている模様です。共通目標の達成に世界はどこまで近づいているのか、そしてトランプ大統領就任直後にパリ協定から離脱したアメリカを含め、各国の動きが注目されます。日本は中期目標として、2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度の水準から26%削減することを掲げていますが、地球温暖化を止めるには世界中の国々が協力して対策を進めなければなりません。そのための共通ルールを決めたのがパリ協定であり、これまでルールの整備は進んできました。あとは実践と結果です。今回のCOP30では、世界が団結して気候変動に立ち向かうことができるのかが試される重要な会議でもあります。気候変動への取組を前進させる起爆剤になることが期待されています。
〇ブラジル・べレンで開催される意味
</今回のCOP30は、ネイチャーCOPとも言われています。これは議長国ブラジルが森林保全に関する議論を大きな論点に据えているからです。「地球の肺」と呼ばれる地球最大の熱帯林を有するアマゾン地区都市ベレンが、開催地に選ばれたのも象徴的な意味があります。 森林は大気中の炭素を吸収・貯蓄することで気候変動の進行を遅らせてくれると同時に、生物多様性の宝庫でもあります。しかし、南半球を中心に深刻な森林破壊が継続的に起きており、 生き物たちの棲み処を奪ってしまっていることも問題視されています。 COP30の議長国ブラジルは、森林を守るための基金「トロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティ(国際熱帯雨林保護基金)」、通称TFFFを立ち上げました。この基金の運用益により熱帯林を保全することを約束した国々には、年間40億米ドルの資金を提供することを目指しています。 このようにブラジルはCOP30では、森林保全と経済成長の両立モデルを提案する意向を示しています。ただブラジル国内では農業・鉱業ロビーが強く、経済開発とのバランスは難しいというのが実情のようです。 パリ協定以前からも、多くの国が森林保全と再植林を掲げてきました。森林はCO2を吸収する「自然のインフラ」であり、産業革命前まで大気中のCO2は、海に溶け込んだり、植物や植物プランクトンの光合成の自然現象によって吸収され、バランスは保たれてきました。いわば森林が地球の健康を維持していたのです。しかし、人間が石油や石炭などの化石燃料を大量に燃やしたことで、自然現象では吸収しきれないCC2が大気中に残ってしまい、地球の温度が上昇してしまったと考えられています。 国際的にも「REDD+(森林減少・劣化に由来する排出削減)」などの運動が広がり、減少速度は緩やかになってはいます。実際、国連食糧農業機関(FAO)の統計では、世界の森林減少速度は2010年代前半と比べるとやや緩やかになったと報告されています。特にアジアやアフリカの一部では再植林プロジェクトが一定の成果を上げました。 しかし、全体としての喪失速度が緩やかになっただけで、依然として「森林は失われ続けている」という現実があります。世界では、いまだ年間約500万ヘクタール(九州の約1.3倍)の森林が消失しているといわれています。パリ協定から10年を経た今も、「減速」はしたものの「反転」には至っていないのです。
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〇日本の現状とグリーン・ポケットの関係
この流れの中で、日本の森林の現状はどうなのでしょうか。林野庁のデータによると、2022年度において日本の総吸収量5020万CO2トンの中で、森林によるものは4568万CO2トン、つまり91%を占めているのです。林野庁はこの現状を踏まえ、森林の保護が、日本の国際公約である「2050年のカーボンニュートラル」に貢献する」としています。 一方国内で消費する木材のうち国産材が占める割合を示す「木材自給率」は回復はしてきていますが、安価な輸入木材に押されています。豊富な資源が有効活用されてなく、整備されず放置された森林が数多くあるのです。 森林整備で効果的なのが間伐でしょう。植林された杉や桧は、成長に伴い木々の間隔が狭くなります。そうなると陽光が入らなくなるため病気や虫が発生しやすくなるので、木を間引きする作業、即ち間伐が必要なのです。定期的に間伐を行うと地面まで日光が届くようになり、樹木は十分に光合成ができて、幹も太く成長するようになります。さらに地面の草も育ち、CO2吸収量も高まるのです。この間伐をもっと進めていくことが、カーボンニュートラルにつなが間伐るのです。現状、間伐が進まず放置された森林が見られます。 この間伐の際に伐採される間伐材を使って、グリーン・ポケットはオリジナルの木製プランター「コズミ」を開発しました。従来のプラスチック製品のプランターにはない、環境を考慮した商品です。間伐材の中でも用途の少ない葉柄材に、リブ(凸凹)加工を施したウッドボックスを積み重ねることで、鉢の高さを自由に変化させることができます。日本の森を積み重ねていくイメージのエコプランターとして好評をいただいでおります。ミーティングルームや休憩室だけではなく、エントランスなど広いスペース用には「コズミベンチ」「コズミデラックス」といったコズミシリーズがお勧めです。 そして、ここからいい循環が生まれます。コズミが売れると、私たちも発注を出することができます。材料となる間伐材が要となるので、放置されていた間伐が進みます。間伐が進めば森林の状態が良くなり、CO2吸収量が増える。そうなれは微量ながら日本全体の吸収量が上がり、パリ協定に寄与し、COPで評価される。次のような流れとなるのです。 コズミ ⇋ 森林保護 ⇋ パリ協定 ⇋ COP こうして間接的ではありますが、私たちのコズミとCOPの舞台は緑の力でつながっています。グリーン・ポケットはコズミ以外にも、日本の国産木材を使用したエコプランターを多数開発しています。パーティションとして使う「カーシス」、壁面を飾る「フォレストフレーム」や「ハニカムウォール」など20種類以上のオリジナル商品があり、国産木材を使用しています。お客様はグリーン・
〇森林を「守る対象」から「活かす資本へ」
森林が持つCCO2吸収力による地球温暖化防止力、生物多様性の維持力など、可能性は計り知れません。これまでの気候政策では、森林はどちらかといえば「守る対象」でした。しかし日本は国土の約3分の2が森林という「潜在的資産国」です。今後10年を見据えると、森林を「再生可能な経済資本」として活かす視点が重要になります。森林をどう再生し、どう経済と調和させるかです。ビジネスとしても、森林は未来への投資です。COP30をきっかけに、日本が世界の森林政策の担い手として存在感を高めることを期待したいと思います。森林は脱炭素時代の主役の座に立つ可能性が高いのです。脱炭素の次のフェーズは、「炭素を減らす」から「自然を取り戻す」段階に入ったのではないでしょうか。私たちグリーン・ポケットに関わる人間は、こうした高い意識をもって、業務にあたらなければいけません。私たちが日常行っている風景の後ろには、地球の裏側のアマゾンの大自然があるのです。


