人は自然を求めている:森林浴と安全運転 - 緑のレンタル | グリーンポケット          

小さな森づくりコラム

  • 2025.01.14

    小さな森づくり

    人は自然を求めている:森林浴と安全運転


    人はチンパンジーなどの類人猿と共通の祖先から進化した動物とされています。その時代から緑豊かな森の中で生活しており、いまだにそのDNAを持ち続けているためか、緑の中にいると人は落ち着くといわれています。

    また原始の時代、森の茂みは危険な動物から身を守ってくれる格好のシェルターでした。その一方で、狩りをするときには獲物に近づいたり、待ち伏せをしたりするために自分の身を隠すことのできる絶好の隠れ蓑でもありました。

    こうしたことにより、緑は古くから「安全のシンボル」として認定されることが多いようです。現代社会においても、日本工業規格(JIS)では緑色を「安全・避難・衛生」などをあらわす安全色と規定しており、信号の「進め」や非常口の標識・薬局の看板・建設現場や工場のミドリ十字と呼ばれる安全旗などに緑色が多用されるのはこのことに由来するそうです。

    また、安定や落ち着き、平和をイメージさせるためか、多くの国の国旗にも緑色が使われています。ブラジルでは「自然」、アラブ首長国連邦では「豊かな土地」、イタリアでは「国土」を意味しています。

     

    このように人はずっと、緑と共存して生活してきました。しかし現代、人の生活は都市に移り、人と緑は切り離されつつあります。あまり良いことではないでしょう。千葉大学の研究によると、都市の中と森の中での身体の反応を比べてみた場合、森の中のほうが脈拍数は5・8%下がり、最高血圧は1・4%下がるという結果が出ています。前述したとおり、人の体は緑の中で長く暮らしてきたので、本来都市生活に対応するようには作られていないのかもしれません。つまり、人が生きていくには、自然の力=緑の力が必要なのでしょう。

     

    〇森林浴との関係

    自然の緑が人間に与える効果として「森林浴」が知られています。森林浴とは1982年に当時の林野庁によって提唱された言葉で、森林を従来の木材生産の場だけではなく、健康や保養を目的として利用しようというものです。   

    森林浴が健康に良いとされる理由の1つが「フィトンチッド」です。「フィトン」はギリシャ語で「植物」を指し、「チッド」はラテン語で、「殺す」という意味です。植物が空気中に放出する揮発成分の総称で、自然の臭いや音に人が反応して、自立神経や免疫機能の効果が高まります。これは木々の葉枝が出す香りが原因と考えられています。

    林野庁によると、この植物が出すフィトンチッドが殺菌作用を持ち、それが交感神経の活動にも良い影響を及ぼすそうです。人が森林環境に身を置いた場合、都市環境と比較し副交感神経活動が高まることが明らかになっています。具体的には森林の風景を観察した場合は51.6%、森林をウォーキングした場合は102.0%、副交感神経活動の指標となるHRV HF成分が高まるとしています。

    また、作業的には集中力が増す、記憶力が良くなるとされます。体調的には心拍数が減る、眠りに入るまでの時間が短縮される、「コルチゾール」というストレスホルモンが減るといった効果も期待できます。つまり森の中で過ごしてフィトンチッドを浴びることで、身体も心も健康になるのです。園芸療法のように具体的に病院などで医療プログラムになることは少ないですが、森林浴という言葉はポピュラーになっています。

     

    〇パーキングエリアにおける実験

    自然の緑を感じることで、ドライバーに精神的に良い影響を及ばすことを立証した実験例を紹介しましょう。実際のパーキングエリアで行った実験結果からの考察です。

     

    現在「あおり運転」と呼ばれる、悪質な運転が社会的な問題になっています。これは「車間距離を詰める」「幅寄せする」「執ようにクラクションを鳴らす」といった運転行為を差し、ドライブレコーダーに残された記録をみるまと悪質なものが多いです。特にスピードが出る高速道路では、大きな事故につながる危険性が高いことが指摘されています。

    あおり運転をした人の供述を見ると、相手ドライバーに対する「もっと速く走れ」「邪魔だ」という、怒りや敵意にも似た感情が引き起こす事が多いようです。いわゆる“イライラ感”ですが、こうしたイライラ感を鎮めるには心に余裕をもってハンドルを握ることです。それには好きな音楽を聴く、適度に水分をとるなど様々な方法がありますが、心に余裕をもたらすといえば、やはり緑に触れることでしょう。

     

    グリーン・ポケットは、産学連携研究でオフィスにおける緑の効果について学会発表しています。その時に研究の監修をお願いした千葉大学園芸学部の岩崎寛教授は、次のような実験を行っています。実際の高速道路のパーキングエリアを、利用者が緑に接する機会が多いデザインに改良して、利用者の心理状態に与える効果を検証したのです。

    オフィス実験において緑の存在が働く人のストレス軽減に効果があったように、緑の力でドラバーがリラックスして心理状態が良くなれば、安全運転に繋がり事故も減ることが期待できます。

     

     検証は千葉県の有料道路内にある、野呂パーキングエリアにて実施しました。施工前の野呂パーキングエリアは、全体の両脇に緑地がある一般的な設計です。車を降りた利用者はフードコートや売店に立ち寄り、駐車場に戻ります。移動経路は矢印の通りで、途中に緑地はありませんでした。

    それを施工後は、利用者の移動経路に必ず緑地を通るような設計に改良したのです。具体的にはハーブ等の植栽をして、利用者が運転前に緑と接するスペースを移動経路に作りました。

     


     



     

     

     

     

     

    上:施工前 下:施工後

     

    そして、同じ利用者に施工前と施工後の心理状態を、オフィス実験でも使用したPOMS検査という分析ツールで比較しました。

    結果、「怒り、敵意」「混乱」「抑うつ・落ち込み」「疲労」「緊張・不安」のマイナス感情が、施工前より施工後の方が改善されることがわかりました。

    つまり、運転前に緑と接することでドライバーの「イライラ感」が軽減するのです。事故が減ることが期待できます。

     

    国はあおり運転を取り締まる「妨害運転罪」を創設しました。違反1回で免許取消、高い反則金など厳しい処分を課し、撲滅に努めています。罰則を強化するのも、あおり運転を撲滅する方法の1つでしょう。しかし、そうした「北風政策」だけではなく、運転者がハンドルを握る前は、イライラ感・怒り・敵意といったマイナスの感情にならないような対策をすることも必要です。

     

    それには緑に触れて、心を整えてから運転することを提案します。ようするに心が荒れてしまう前に、緑の力で交通事故を未然に防ぐのです。交通安全運動のスローガンとして使っていただきたいですね。「運転前に緑を見よう!」なんて、いいキャッチフレーズだと思います。

     

    〇都市生活の中で緑を感じるには

    とはいえ、多くの人は日常生活の中で実際の森林を訪れる時間はありません。特に働いていれば、せいぜい休憩時間や通勤時間を利用して公園での散歩・会話・自然観察などが出来る程度です。いわば「公園浴」が限度で、時間も場所も限られてしまうでしょう。

     

    都市生活の中で、森にも公園にも行かずに自然の力を享受できる方法、それがグリーン・ポケットの「小さな森」なのです。手入れされた植物はオフィスにいながら四季折々の季節を演出します。また、間伐材を利用したオリジナル植物プランターは、木材の無垢の風合いを楽しむことができます。

     

    グリーン・ポケットの「小さな森」で、オフィスにいながら自然を感じ健康になってください。

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