動かなくても心は動く ~ 一緒に暮らす植物は静かなペット~ - 緑のレンタル | グリーンポケット          

小さな森づくりコラム

  • 2026.03.17

    コラム

    動かなくても心は動く ~ 一緒に暮らす植物は静かなペット~

     

    〇植木の里親という新しい取り組み

    近年、ペットショップで購入する代わりに、行き場を失ったネコたちを里親として迎え入れる飼い主が増えています。保護ネコの里親制度ですが、これは飼い主が何らかの事情で飼育を続けられなくなったネコや、動物愛護団体で保護されたネコを家族として迎え入れる仕組みのことです。保護ネコの里親になるためには動物愛護団体や保護団体に連絡し、団体が定めた審査を通過する必要があります。「小学生以下のお子さんや高齢者がいる家庭はNG」「単身者不可」など、その資格には厳しい条件があるようです。 この里親制度の動きは、ペットから植物にもでてきています。小売店も営むある造園屋さんは「植木の里親」という取り組みを始めました。 ペット同様に、家の引越しや建て替えなどの事情で庭の木や鉢物を処分したい人がいます。そうした人たちから植物を引き取り、育ててくれる人、つまり里親に渡すのです。小さな鉢から庭木まで、庭木は根ごと掘り出して同社の敷地内にいったん植栽することもあるそうです。引き取った植物は自店やSNS、地元のタウン誌などで公開し、里親を募集します。 やはり思い出のある庭の木などは簡単に処分できないのでしょう。予想以上に引き取りを希望する人は多かったそうです。造園屋さんの話を要約しました。 『きっかけは、ある年配の女性から亡くなったご主人が大切にしていた庭木の処分を頼まれたことでした。本当は残しておきたい、でも自分では世話することができないので処分するしかない。そんな辛い心情を察してなんとかできないかと思い、「よかったら引き取って育てましょうか」と提案したところ、大変喜んでもらったのです。以来様々な理由から植木を廃棄したい人がいることを知り、引き取るようにしました。 大きいものだけでなく、小さな鉢物の植木を誰かに引き取って欲しいという人もいます。やはり亡きご主人が世話をしていた観葉植物でした。情が移るのでしょう。同時に、そんな植木を育ててくれる人はいないだろうかと思いました。つまり里親になってくれる人を募集することにしたのです。 最初は引き取り手となってくれる方が少なかったのですが、地域のタウン誌やSNSで広まっていきました。予想以上に、口コミでの拡がりは大きかったですね。お店でも自由に見れるようにしたところ、少しずつ里親希望の方が増えていきました。地域への貢献にもなったと思います」 面白い話ですね。SDGsにも通じる、新しい取り組みだと思います。里親になる人からは植木代金はとりませんが、植栽費用や運搬費は有料としていて、ビジネスとしても成立しているようです 既存の庭手入れや造園工事といった本業にも好影響がありそうで宣伝効果になっているとのことです。この活動に共感して「一緒に働きたい」と応募してくる人もいて嬉しかったという話でした。 また行政にも「緑の里親制度」という活動がいくつかの自治体で見られますが、これは同じような名前でもあくまでボランティア活動です。日本各地で行われていて、神奈川県茅ヶ崎市の「緑の里親制度」を例にすると、運営者は茅ヶ崎市公園緑地課、目的は公共空間に草花などを植えて街並をきれいにするものです。登録された市民やグループが自主的に行っています。

     

     

    〇人と人、会社と会社の信頼関係の証

    亡きご主人が大切にしていた植木には情があり、簡単には処分できない。前述した感情の起伏はビジネスの世界でも起こります。同じような話がグリーン・ポケットのサービス現場でもあるので紹介しましょう。 グリーン・ポケットでは、お客様のお手持ちの植物のメンテナンスや廃棄の相談を受けることがあります。例えば、引越し祝いなどで貰った鉢物の植物が「葉が伸びすぎて困っている」「水やりができてない」「枯れてしまって処分したい」というものです。中でも処分は問題となっています。こうした声には、グリーン・ポケットはメンテナンス代や廃棄作業費としてお応えしています。 ある総務部長から聞いた話です。総務部長は数年前の引越し祝いとして貰った観葉植物の処分に困っていました。大切な取引先であり、手配したのはおそらく先方の自分と同じ総務部門の方、その手間は分かります。しかも懇意にしている先方担当者が「いつもお世話になっているので、私が選びました」と、納品の時にわざわざ花屋と一緒運んできたものです。あの時の彼の笑顔を思い出すと、今まで捨てられなかったそうです。 他の取引先から貰った植物もいくつかあり、葉が伸びたり枯れてしまったりしても,誰も手入れできずに、隠すように放置していました。「せっかくのお祝いでいただいた物なのに申し訳ない」という思いがいつもあったそうです。 それがグリーン・ポケットのサービスを知り、メンテナンスで蘇ったものもあり、ありがたいと感謝されました。また廃棄したものもありましたが「植物の専門の会社に引き取ってもらった」という名目ができたことで、不義理をしたという気持ちが少し和らいだそうです。付き合いは続いているのだから簡単にはすてられない、よい供養ができたよと教えてくれました。 ビジネスは信頼関係で成り立っています。総務部長にとっては、観葉植物は単なる鉢物ではなく、人と人、会社と会社の信頼関係の象徴でもある深い存在だったのでしょう。

     

    〇同じ生命体として、ともに生きる存在

      こうした話を聞くと、人間と植物の深い関係をみるような気がします。同じ生命体として、植物は犬やネコのように言葉を発せず、懐いたり駆け寄ったりもしないけれど、同じ生命体として共に暮らし通じ合う存在であることはペットと変わらないのではないでしょうか。 植物は自分では動きません。でも心を動かします。人間が心を寄せ、世話をやき、気づき、支えることで関係が深まります。水をあげる、光を当てる、ほこりがつかないように葉を拭いてあげる。犬ならばすぐに尻尾を振るだろうし、ネコならば可愛らしく目を細めたり鳴いたりするでしょう。 植物はその時は何も答えません。でも、ある日突然「新芽が出た」「花が咲いた」「葉が元気になった」――そんなサインを返してくれる。植物は「最も無口なペット」と言えます。現代のように忙しく、孤独感の強い社会では、「世話が楽」「裏切らない」「静かに寄り添ってくれる」のです。植物は犬やネコのような動物よりも、手間がかからずに安心できるのです。特別な存在と言ってよいでしょう。SNSを見れば、「#植物のある暮らし」「#うちの子」などのハッシュタグで、自宅の観葉植物を“育てている”というより“可愛がっている”感覚が広がっていることがわかります。家族の1人であり、生活の1部なのです。 植物はペットとして、ともに感じ、ともに通じ合う存在です。植物は言葉では答えなくても成長で応えてくれます。自分は動かなくても人の心を動かします。人と人をつなげ、豊かにしてくれる大切な存在だと改めて感じます。